本章では、2005年小泉首相の下日本のアフリカに対する公約を評 価するものである。本レポート発行の直前の2008年5月にアフリカ 開発会議(TICAD)において新たな公約が発表された。新たな公約 では、2004年~2007年までのアフリカに対する平均ODA額を 2012年までに倍増させることを掲げているが、ここでも、二国間援 助のみが含まれているため、公約の影響は限定的である。小泉首相 による最初の公約と福田首相による最近の公約は、それが果たされ るかどうかにかかわらず、日本が世界において果たすべき主導的役 割に見合う水準のものではない。日本が2012年までに二国間、多国 間いずれのODAも倍増させ、2010年に少なくとも10億円の追加 支援を行うということが、世界における主導的役割と一致していると 言えるだろう。本章は福田首相が直近に行った誓約以前に書かれた ものであり、発行締め切りの関係で、DATAはこの新たな公約の分 析内容を本レポートにまとめることはできなかったが、G8サミット に間に合うように、www.one.org/jpに掲載する予定である。
日本は2005年に、ODAを以後5年間に総額1兆円(100億米ドル)増 やし、以後3年間に対アフリカのODAの倍増を約束した。2005年6月 に、日本は保健関連ミレニアム開発目標(MDGs)達成への世界規模の努力 を支援するため、5,400億円(50億米ドル)からなる5ヵ年計画「保健 と開発イニシアティブ」を発表した。また、「アフリカの民間セクター開発 のための共同イニシアティブ(EPSA)」に対して、アフリカ開発銀行(ADB) との協調のもとで5年間に約1,100億円(10億米ドル)を提供する考えを 表明した。
日本政府は2005年4月のアジア・アフリカ・サミットにおいて初めてこうした 公約をしたのに続き、グレンイーグルズ・サミットにおいて、2007年までに アフリカ向け二国間援助につき2003年の純支出額を基準にして倍増する 方針を再度表明するとともに、2004年の純支出額を基準にして2009年末 までに総額1兆円(100億米ドル)増加するという目標を達成したいとの 意向を明らかにした。
注:日本の公約はサブサハラ・アフリカに対する二国間援助 を倍増させるということに限定されている。そのため、これら の数値は二国間援助額のみを示している。
安倍晋三内閣総理大臣(当時)を議長とし、内閣官房長官、外務大臣、財務 大臣、および経済産業大臣で構成する海外経済協力会議2007年1月24日 に第6回会合を開き、政府開発援助(ODA)を2005年~2009年の5年間 に総額100億ドル増加させるという日本政府の公約を着実に履行して行く ことで合意した。
日本は2004年時点での実質価格でサブサハラ・アフリカ向け二 国間ODAを2003年ベース比で倍増するという、意欲的とはいえ ない公約を達成したが、2007年には2006年の水準に比べ同地 域向けのODAを削減したほか、世界全体を対象とするODAも過去 2年間連続して減少している。本レポートにおいて評価は試みてい ないが、日本はアフリカ開発会議(TICAD)にてアフリカ向け二国 間ODAを2012年までに倍増すると新たに公約した。しかし、ここ の誓約からも多国間援助に関する内容を削除している。日本はファ ースト・トラック・イニシアティブ(FTI)の共同議長国でありながら、 アフリカへの水供給に関する協力を拡大していないほか、教育部 門への支援も思わしくない。
貿易部門においてはアフリカ諸国にさらなる機会を与えるための 開発を伴う政策改善に向けた貢献がほとんど見られない。
基準年の設定にあたり、日本は過去10年間で援助額が最低の600億円(2004年 価格で5億6,100万米ドル)であった2003年を選んだ。2003年を基準年と した場合、日本の対アフリカ二国間ODA援助の目標額は11億2,200万 米ドルとなることを意味する。2 援助の倍増といっても、2007年の実質ベース でいえば、日本の援助額は1989/90年より少なくなる。これが意欲的な約束 とはいえないことは明らかである。
日本はサブサハラ・アフリカに対する多国間ODAの明確な公約をしておら ず、世界全体に向けたODAのうち、アフリカ向けに配分する割合についても 具体的な約束をしていない。しかしながら、日本は2004年~2009年の間 に二国間および多国間ODAを総額100億米ドル増加させるという、全世界 を対象としたODAの公約をしている。DATAはこの増額にアフリカが含まれ ることを前提としている。したがって、DATAは日本がODA総額の公約を果 たすために、世界全体に向けたODAの増額と同じ割合でサブサハラ・アフリ カに対する多国間ODAも増額させ、2007年の同地域に対する公約期限終 了までこれが実施されることを想定した。
また2008年~2010年については、DATAは日本がこの総額を維持するこ とを前提としている。これは、日本による2008年5月からの新たな公約に変 更されることになるが、現時点ではこの分析内容は織り込まれていない。
この目標に対する進捗を測定するため、DATAレポートは経済協力開発機構 (OECD)の開発援助委員会(DAC)に報告されたODA実績を検証してい る。また、二国間債務免除を除いたサブサハラ・アフリカ向けODAを検証し ている。3 債務免除は開発にとってきわめて重要であるが、DACに計上 された二国間債務免除は被援助国にとっての真の価値を歪めるとともに、 ドナー国にとっての真のコストを正確に反映しない。多国間債務免除は世界 銀行の国際開発協会(IDA)やその他の開発銀行に対する供与額の一部と してODAに含まれている。本レポートにおけるその他すべての章について は、2004年をベースとした実質価格で常に進捗を評価している。他方本章 では、2007年の二国間公約を達成したのか否かに影響するため、2004年 をベースとした実質価格と名目価格のいずれも示した。